司法書士の難易度は?合格に必要な勉強時間や合格率でわかること

司法書士はそう簡単には合格できない試験で、一般的に言うところの難関試験になります。もっとも、世の中には難関試験と言われるものは他にもありますから、ひとくちに「これ難関試験なんすよ」と言われてもどの程度のものかイメージがわかない方が殆どでしょう。

というわけで、司法書士はどのくらいの難易度なのかを複数の視点で解説します。

他資格と比較すればイメージしやすいだろうということで行政書士や司法試験と比較もしてみたので、興味があればどうぞお付き合いください。

司法書士の難易度を勉強時間で計る

まずは勉強時間で司法書士の難易度を計ってみましょう。司法書士試験の場合、よく言われているのが初学者で3000時間程度の勉強時間は必要と言われています。

ひとくちに3000時間と言われてもピンとこないと思います。なんか掛かりそうだなくらいの感想ですよね。

これは最短の場合で、人によってはもっともっと掛かるでしょう。個人的にも3000時間で合格というと違和感がありますね。

2年合格コースだと1日何時間勉強するのか

簡単なシミュレーションしてみましょう。仮に2年間勉強できるとしましょう。730日ですから、3000時間を730日で割ると約4.11。つまり最短で2年間の730日毎日4時間強勉強して合格可能な実力が付くということです。

こう見ると司法書士の難易度がなんとなく見えてくるのではないでしょうか。ここまで勉強する必要がある試験なのか、と。

社会人で毎日4時間勉強は無理

追い打ちをかけるようですが、社会人として仕事している方が兼業で毎日4時間強勉強するのは不可能に近いと思います。1週間はできても2年毎日はまず無理。だいたい、モチベーション維持、気持ちが続きません。

しかも、それが最短時間というからいかほどの難易度かお判りでしょう。

独学だと合格まで何年掛かるのか

最短で勉強時間3000時間というのは独学の場合の話です。独学だと最短で3000時間の勉強と答えます。

何年掛かるかは一日何時間勉強できるかに掛かっていますが、1日4時間で2年強、3時間で2年9ヶ月ぐらいです。

もっとも、何度も言いますがこれは最短であって、実際には4000時間、5000時間ぐらいは普通に掛かると思います。そのくらいは覚悟しておきましょう。

独学で合格できるのはほんの一握り

もっとも独学で合格できる人はほんの一握りです。独学だと5年間勉強しても合格できない人も多く、それ以上になるとモチベーションが続かなくてあきらめてしまうでしょう。

つまり、独学で目指すような難易度の試験ではないということです。

司法書士の難易度を合格率から計る

次に、合格率から難易度を計ってみたいと思います。下、司法書士試験の直近10年間の合格率の推移になります。令和4年度は執筆時点では最終合格発表が終わっていません。ので、公式で公表次第更新します。

過去10年ですと上昇傾向ですが、それでも直近で5%強。100人受験して5人しか合格できません。なかなか難易度高い試験ですよね。平成25年の2.91%って司法試験でもここまで低い数字合ったかな?という低さです。

受験者数 合格者数 合格率(%)
H25 22,494 796 2.91
H26 20,130 759 3.09
H27 17,920 707 3.25
H28 16,725 660 3.24
H29 15,440 632 4.09
H30 14,387 621 4.31
R元 13,683 601 4.39
R2 11,494 595 5.17
R3 11,925 613 5.14
R4 12,727 660 5.20

なぜ司法書士試験は難易度が高いのか

次は勉強時間と合格率の他に司法書士試験の難易度が高い理由をお話します。以下2点

  • 合格ラインが高い
  • 科目数が多い

合格ラインが高い

司法書士試験の場合、合格点が異常に高いという特徴があります。どういうことかというと、高得点しないと合格ラインより上に行かない、つまり不合格になるということです。

「基準点」という考え方があります。詳しくは「司法書士試験の合格点はどのくらい」を参照いただきたいのですが、合格ラインのことです。

この基準点、司法書士の場合非常に高くなる傾向があり、年度によっては正解率75%取っても合格できない年も珍しくありません。

合格当落線以上の受験生のレベルが非常に高いということを意味しており、ここから抜け出すのはなかなか大変なのです。

科目数が多い

民法は出題科目が非常に多いのが特徴です。全部で11科目。これは法律系資格では最多です。

  • 民法
  • 憲法
  • 刑法
  • 不動産登記法
  • 商業登記法
  • 商法
  • 民事訴訟法
  • 民事執行法
  • 民事保全法
  • 供託法
  • 司法書士法

11科目すべて勉強しなければならないというのは、本当に大変です。さらに、上で述べたように、当落付近以上の受験生のレベルがことさら高いため、本当に1問落とすことが命取りになります。

だから、「捨て科目」というものを作るべきではないということになります。11科目で捨て科目なし。これは厳しいです。参照:司法書士試験の科目-最重要科目や科目別難易度をまとめてみた

行政書士の難易度と比較

ちょっと思考を変えては資格と難易度比較をしてみたいと思います。

司法書士と行政書士の難易度比較ですが、司法書士の方が断然難易度が高いです。

下、行政書士と司法書士の比較表になりますが、どこを取っても司法書士の方が厳しいのが見て取れます。勉強時間など3倍の格差があります、これはもう明らかでしょう。

司法書士 行政書士
勉強時間 1500~3000時間 500~1000時間
出題範囲 幅広く科目によっては非常に細部が出題 どの科目も基本的にな部分
合格率 4~5%台 10%強

行政書士の選抜方法も関係あり

また、試験合格者の選抜方法にも両者の難易度に影響を及ぼします。それは、司法書士は相対評価、行政書士は絶対評価ということです。

  • 相対評価:受験者内で相対的に上から点数が良かった者が合格。一般的な選抜試験はこちら。
  • 絶対評価:周りの受験生の点数は関係なく、合格点さえ取ればそのものは合格というもの。

つまり、司法書士は競争原理が働きますので勝ち抜く必要があります、当然それは厳しいものがあります。他方、行政書士は自分がライバルと言いますか、自分が合格点取ることだけに集中すればよいというもの。

このように、司法書士と行政書士の間には、歴然とした難易度の差があるとハッキリ言ってもいいでしょう。

弁護士の難易度と比較

司法書士と弁護士、つまり司法試験とも比較してみましょう。難関試験である司法書士でも、司法試験の方が難易度は高いと言えます。昔から司法試験は文系国家資格最難関と言われていましたが、それは今でも変わらないと思います。

参考までに、下の比較表をご覧ください。

司法書士 司法試験
勉強時間 1500~3000時間 3000~8000時間
出題範囲 幅広く科目によっては非常に細部が出題 科目にもよるが、範囲自体は同党もしくは司法書士の方が広いが、司法試験の方が深い。
合格率 4~5%台 50%程度

ご覧のように、勉強時間を除けば微妙です。司法試験の合格率を見れば大したことないねと思われる方もいると思います。でも、やはり司法試験の方が難易度ははるかに高いのです。

弁護士と司法書士はその道程が段違い

司法書士試験は、筆記試験と口述試験です。筆記試験に合格した者だけが口述に進みますが、その口述は殆どの者が合格します。つまり、実質的には筆記試験合格すれば司法書士には合格したようなもの。実質1日で決まります。

  1. 司法書士筆記試験
  2. 司法書士口述試験
  3. 司法書士合格


司法試験はこうはいきません。まず、司法試験の受験資格を得るためにとんでもない山を越える必要があります。司法試験の受験資格を得る方法は2つ、予備試験という試験に合格するか、法科大学院の課程を一定数修了すること。

予備試験ルートから司法試験合格までのルートをチャートで見てみましょう。

  1. 予備試験短答試験(合格率約20%)
  2. 予備試験論文試験(合格率約20%)
  3. 予備試験口述試験(合格率90%超)
  4. 司法試験

このように、予備試験は合格率約4%であり、そこを勝ち抜いた者と、法科大学院ルートの者を合わせて司法試験、そこから半分程度のものが合格、というもの。

さらに言えば、司法試験合格しても1年間の司法修習が待っており、そこの卒業試験である「二回試験」に合格できないと弁護士にはなれません(裁判官・検察官も同様)。

司法書士合格まで勉強時間の時短は可能か

合格まで勉強時間3000時間というのはやはり掛かりますよね。時短はできないのでしょうか。司法書士予備校を利用するしか勉強時間の時短は難しいでしょう。

時短の形は一つではないと思います。効率的な勉強による、単純な時短かもしれません。2500時間とか2000時間とか。

オンライン講座やデジタルテキストによる、通勤時間等のすき間時間勉強で1日を有効に使えるかもしれませんし、質問やカウンセリングなどのサポートによるモチベーション維持も図れるかともあるでしょう。

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まとめ

いかがだったでしょうか。司法書士の難易度をあらゆる方面から検証してみましたが、司法書士試験は普通に難しい試験だということがお分かりいただけたと思います。「超」が付くほどの。

「難関」て人によって定義が違ってしまうので、あえて超を付けさせていただきましたが、私から見てとにかく難易度が高い試験です。

それでも、毎年合格してくる人がたくさんいますし、その合格者のほとんどは社会人の方々です。やり様によってはそれほど非現実的な話ではないということですね。