司法書士の難易度を勉強時間や合格率で行政書士や司法試験と比較

司法書士はそう簡単には合格できない試験で、一般的に言うところの難関試験になります。もっとも、世の中には難関試験と言われるものは他にもありますから、ひとくちに「これ難関試験なんすよ」と言われてもどの程度のものかイメージがわかないでしょう。

そこで、他の法律国家試験、行政書士と司法試験を、司法書士との難易度を勉強時間と合格率で計ってみます。

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司法書士と行政書士・司法試験の関係

まず各資格試験の立ち位置をはっきりさせておきましょう。今回司法書士と難易度比較するのは行政書士と司法試験です。行政書士試験は行政書士という国家資格に就くための登用試験、司法試験は弁護士・検察官・裁判官という法曹三者の職業に就くための登用試験です。

司法試験は、法律国家資格最難関試験と言われています。ここを頂点としてその次に難易度が高いとされる法律系国家試験が司法書士。そして、その次になるのが行政書士だと言われています。とりあえず、ここでは大雑把にこう認識しておいてください。

難易度:司法試験 > 司法書士 > 行政書士

それぞれどういった職業かも簡潔にまとめておきました。

行政書士という職業

「街の身近な法律家」とか言われたりしますが、行政書士の主な仕事は官公署に提出する書類、その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成(行政書士法1条の2)です。

これらの書類作成には、専門知識がないと作れないものが少なくありません。それを代行するのが行政書士です。

弁護士という職業

弁護士とは大きい括りで言えば「法律サービス」全般です。弁護士資格を持っていれば、弁護士本人ができるできないは別にしてできない法的サービスはないです。

が、メインは訴訟代理人でしょうか。裁判の代理人ですね。訴訟代理人は一部司法書士ができる場合がありますが、弁護士なら制限はありません。

検察官・裁判官という職業

法曹三者のうちの検察官・裁判官は国家公務員ですね。

検察官は法務省の中の検察庁所属になります。犯罪捜査や刑事裁判を遂行するのが職務になります。ドラマでもよく出てくる職業ですし「東京地検特捜部」なんて誰もが一度は聞いたことあると思いますが、被疑者の起訴不起訴を決められる権限を持つのは検察官のみです。

裁判官は、国家公務員でも特別国家公務員という任命権者(形式的には内閣)による任命によってなる国家公務員。司法権を行使して裁判を行うのが主な職務です。

司法書士の難易度を勉強時間で比較

勉強時間で司法書士の難易度を計ってみましょう。司法書士試験の場合、よく言われているのが初学者で3000~5000時間程度の勉強時間は必要と言われています。

ひとくちに3000時間と言われてもピンとこないと思います。なんか掛かりそうだなくらいの感想ですよね。

これは最短の場合で、人によってはもっともっと掛かるでしょう。個人的にも3000時間で合格というと違和感がありますね。

行政書士の場合

行政書士に合格できる実力が身に付く勉強時間は800時間~1000時間程度と言われています。科目が6科目しかなく(司法書士は11科目)、制度的に「捨て科目」を作ることも可能だからこれだけの差が付くのだと思います。

司法試験の場合

司法試験合格に必要な勉強時間、その前段階の予備試験合格含めて5000時間~8000時間程度と言われています。やはり最難関試験ですからこれだけの勉強時間が必要なのですね。

司法試験は8科目と司法書士よりも少ないのですが、論文試験と言う難関試験をパスしなければなりません。司法試験の場合、論文試験対策は総勉強時間の7割程度を占めると言われています。

司法書士1日に何時間勉強するべきか

司法書士合格に必要な勉強時間が分かりました。では、1日何時間勉強する必要があるのでしょうか。

2年間勉強できるとしましょう。730日ですから、3000時間を730日で割ると約4.11。つまり最短で2年間の730日毎日4時間強勉強して合格可能な実力が付くということです。

社会人として仕事している方が兼業で毎日4時間強勉強するのはどうでしょう。1週間はできても2年毎日は厳しいのでは?だいたい、モチベーション維持、気持ちが続きません。

独学で合格できるのはほんの一握り

勉強時間3000~5000というのは独学勉強での話だと思ってください。つまり、自分の力だけでは2年で合格は厳しいということになります。何年掛かるかは一日何時間勉強できるかに掛かっていますが、1日4時間で2年強、3時間で2年9ヶ月ぐらいです。

実際問題、独学だと5年間勉強しても合格できない人も多く、それ以上になるとモチベーションが続かなくてあきらめてしまうでしょう。

つまり、原則として独学で目指すような難易度の試験ではないということです。

司法書士の難易度を合格率から計る

次に、合格率から難易度を計ってみたいと思います。下、司法書士試験の直近10年間の合格率の推移になります。過去10年間推移は法務省にも公表は無いので、スタディングの資料より抜粋させていただきました。

過去10年ですと上昇傾向ですが、それでも直近で5%強。100人受験して5人しか合格できません。なかなか難易度高い試験ですよね。平成26年の3%強って予備試験でもここまで低い数字出てないと思います。厳しいですね、司法書士。

受験者数 合格者数 合格率(%)
H26 20,130 759 3.09
H27 17,920 707 3.25
H28 16,725 660 3.24
H29 15,440 632 4.09
H30 14,387 621 4.31
R元 13,683 601 4.39
R2 11,494 595 5.17
R3 11,925 613 5.14
R4 12,727 660 5.20
R5 13,372 695 5.20

行政書士・司法試験(予備試験)と合格率を比較

では、司法書士と行政書士、司法試験の合格率を比較してみます。司法試験については、受験者資格が予備試験法科大学院課程修了者なので、他資格の合格率を比較するのはフェアじゃないと思い予備試験の合格率と比較することにしました。

元ネタはいずれもスタディングの資料とさせていただきます。

年度 行政書士(%) 司法書士(%) 予備試験(%)
令和元(H31) 11.48 4.39 4.04
令和2 10.72 5.17 4.17
令和3 11.18 5.14 3.99
令和4 12.13 5.20 3.63
令和5 13.98 5.20 3.58

行政書士がとりわけ高い(それでも10%台ですが)のは、選抜方法もあると考察します。行政書士は選抜が絶対評価と言って要件満たす点数を取った者はすべて合格とする方式。つまり、問題難易度にしては合格者が多いということができます。

他方、司法書士、司法試験は相対評価。合格者合格率に合わせて上位何点あるいは何人と受験者を相対的に評価する方式。主催者に狙いがあるので合格率はある程度を見込むことができます。

なぜ司法書士試験は難易度が高いのか

勉強時間、合格率の比較から司法書士の難易度を計ってきましたが、なぜ司法書士の難易度は高いのでしょうか。以下2点に集約できると思います。

  • 合格ラインが高い
  • 科目数が多い

合格ラインが高い

司法書士試験の場合、合格点が異常に高いという特徴があります。どういうことかというと、高得点しないと合格ラインより上に行かない、つまり不合格になるということです。

「基準点」という考え方があり(司法書士試験の合格点はどのくらい)、司法書士の場合非常に高くなる傾向があり、年度によっては正解率75%取っても合格できない年もあるぐらいです。

合格当落線以上の受験生のレベルが非常に高いということを意味しており、ここから抜け出すのはそれだけ高得点を取る必要があるのです。

科目数が多い

民法は出題科目が非常に多いのが特徴です。全部で11科目。これは法律系資格では最多です。

  • 民法
  • 憲法
  • 刑法
  • 不動産登記法
  • 商業登記法
  • 商法
  • 民事訴訟法
  • 民事執行法
  • 民事保全法
  • 供託法
  • 司法書士法

11科目すべて勉強しなければならないというのは、本当に大変です。さらに、上で述べたように、当落付近以上の受験生のレベルがことさら高いため、本当に1問落とすことが命取りになります。

だから、「捨て科目」というものを作るべきではないということになります。11科目で捨て科目なし。これは厳しいです。参照:司法書士試験の科目-最重要科目や科目別難易度をまとめてみた

司法書士合格まで勉強時間の時短は可能か

合格まで勉強時間3000時間というのはやはり掛かりますよね。時短はできないのでしょうか。司法書士予備校を利用するしか勉強時間の時短は難しいでしょう。

時短の形は一つではないと思います。効率的な勉強による、単純な時短かもしれません。1500時間とか2500時間とか。

オンライン講座やデジタルテキストによる、通勤時間等のすき間時間勉強で1日を有効に使えるかもしれませんし、質問やカウンセリングなどのサポートによるモチベーション維持も図れるかともあるでしょう。

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まとめ

いかがだったでしょうか。司法書士の難易度をあらゆる方面から検証してみましたが、司法書士試験は普通に難しい試験だということがお分かりいただけたと思います。「超」が付くほどの。

「難関」て人によって定義が違ってしまうので、あえて超を付けさせていただきましたが、私から見てとにかく難易度が高い試験です。

それでも、毎年合格してくる人がたくさんいますし、その合格者のほとんどは社会人の方々です。やり様によってはそれほど非現実的な話ではないということですね。